カテゴリー「ミュージカル」の記事

2009年6月24日 (水)

劇団四季「ジーザス・クライスト・スーパースター」 大阪公演を観て

 「オペラ座の怪人」以来の四季劇場となりました。常に衣装や振り付けなど華やかな舞台しか知らない自分にとっては、「ジーザス・クライスト・スーパースター」はかなり異質な趣を感じました。

 まずは、ほとんど色彩がありません。荒れた茶褐色の大地に同化してしまったかのようなイエスをはじめ、民衆のみすぼらしき姿。(白に身を包んだヘロデ王と侍女たちが登場したときは、舞台が突然明るくなったような感じを受けたくらいです)それだけリアリズムに徹し、貧しく虐げられていた人々を描いたのだと思いました。

 またそのリアリズムは、衣装だけではなくイエスその人の心情にも及んでいました。イエスを演じていた物静かな金田俊秀さんの歌声が、突如として金きり声に変わるとき、まさに神の子ではなく、人間の子としての苦悩がにじみでているようでした。そこには奇跡を行い、愛をほどこしたスーパースターのイエスの姿はなく、無力になった我が身を民衆にとりつくされ、ついには弟子にも裏切られるという悲惨なものでした。

 また、初めて知ったのですが、イエスが処刑されるとき民衆は「イエスを十字架にかけろ!」と叫ぶのですね。「金の切れ目が縁の切れ目」的に手のひらをかえしてしまう民衆というのは、時にして残酷なものだと思いました。

 ムチを打たれ(正直もう止めてほしいと思ったくらいです)、最後の磔のシーンの音を立てて手と足に釘を打ち付ける所も、目を覆いたくなるほどでした。きっとキリスト教徒なら、思わず手を合わせるのではないかと思うくらいのラストでした。 

 ただカーテンコールで、「復活」されたイエスはみんなで輪の中に囲いこまれ、ようやく救われた気分になることができました。重いテーマでしたが、音楽のアクセントに合わせ躍動する手足のダンスは、素晴らしいものがあったし、心に残るたくさんのナンバーもありました。ユダを演じられた金森 勝さんが「私たちは命懸けで舞台をやっている」と胸をつまらせながら語っておられましたが、また四季の作品が好きになってしまいました。

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2009年6月 6日 (土)

ミュージカル「シラノ」 大阪公演 6日昼の部を観て

 中学生の頃に読んだ北杜夫著「どくとるマンボウ青春期」に旧制松本高校の寮祭で「シラノ・ド・ベルジュラック」を公演したエピソードが出てきます。そのことを覚えていて「シラノ」というのは、哲学的な小難しい演劇かと思っていたら、そのようなことは全くありませんでした。

 それどころか面白くて愉快で(実際、たくさん笑わせて頂きました)、そして主人公シラノの心情に胸打たれるようなヒューマンなドラマでありました。19世紀後半に初演されたらしいのですが、こうして21世紀になってもミュージカルになるというのは、時代を超えて引きつけるものがあるからだと思います。

 それはひとつにはストーリーの巧みさ、ひとつには登場人物の魅力、ひとつにはメッセージにあります。ロクサーヌという美女をめぐり、でか鼻で醜いが女心を揺さぶれる詩才のあるシラノと、若くて美貌のクリスチャンという二人の男の恋の顛末。その主人公シラノは武勇にもすぐれ、権力や虚栄、傲慢を憎み実に痛快でいてどこかお茶目な人物。そして、訴えかけるのは人が愛するのは、見た目の美しさか、それとも美しい魂かという永遠のテーマ。これだけそろってしかもミュージカルとくれば、面白くならないはずはありません。

 死ぬ間際まで自分の本当の心情を隠し、クリスチャンのゴーストライターに徹することで、思いだけは伝えようとしたシラノの端から見える切なさも、彼にとっては、最後は「心意気」と言い切れるほどの充足感に満ちたものだったのだと思われました。
   

 シラノを演じた鹿賀丈史さん。他の人とは違う節回しの歌い方が際立ち、敵を持つことをむしろ歓びとする気高い演技が素晴らしく思いました。反対に自分の思いとは裏腹にロクサーヌの恋の手助けをしてしまうあたりの、大きな鼻を傾けて困惑を表すところは、チャーミングですらありました。ロクサーヌを演じた朝海ひかるさん。白、赤、黒と三回衣装を替えられますが、そのたびに「求める愛(真剣ななまざし)」「歓びの愛(素敵な笑顔)」「真実の愛(ほとばしる感情)」を見事に演じわけられ、その美しい歌声にも魅了させられました。クリスチャンを演じた中河内雅貴さん。若いひたむきな演技がカッコ良かったです。

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2008年6月21日 (土)

劇団四季「ウェストサイド物語」 21日昼の部 京都劇場

 四季のミュージカルを初めて最前列で観ました。その観た作品が「ウェストサイド物語」というこれもまたすばらしい巡り合わせで、目の前で繰り広げられるダンスや演技の圧倒的な迫力が風圧となって、全身を振るわせました。高さのあるめまぐるしいほどの激しい動きのダンスが、二つの若者グループの敵対感をよりさらけだしていました。その中で恋仲になったトニー(福井晶一)とマリア(花田えりか)が歌い上げる「トゥナイト」は、魂がゆさぶられるほど、美しくそしてせつなく感じられました。
 
 ミュージカルなのに、四季の舞台にはリアリティがあると前から感じていたのですが、今日やっとその謎がとけました。舞台に立つ出演者の一人、一人が、どんな場所にいたとしてもしっかり自分の演技をしているのです。メインの俳優が舞台中央でセリフを語っているときでも、はしのほうで「ちぇっ」とか「ちくしょう」「チキン!」という言葉がはっきり聞こえてきました。
 
   第2幕で白人とプエルトリコ人という差別の壁を乗り越えて、愛を誓い合った二人に悲劇が訪れます。二人の愛を許さない社会を訴えかけるかのように、どこまでも明るく透明な舞台で白人の非行グループのジェット団と、プエルトリコ人のシャーク団が笑顔で手をとって踊る幻想の場面が、より悲しみを深めていきます。最後はあっけない終わり方でしたが、こんな悲劇が二度とおこらないように、この後はみなさんで考えてくださいというメッセージだった気がします。

   「ウェストサイド物語」が、社会の低層でどちらも貧困と被差別に苦しむ白人とプエルトリコ人の若者を描いた、社会派のミュージカルであることを初めて知りました。その意味で、今日の社会にも通じるミュージカルであると思います。
 
  トニー役福井晶一さんのマリアへの熱い思いをこめた歌声、花田えりかさんのいつまでも心に残る美しいソプラノ、松島勇気さんのシャープなダンスが特に印象的でした。

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2008年1月19日 (土)

劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」京都劇場 19日昼の部

P1000506_2  愉快で楽しいミュージカルですが、今の子どもたちに伝えたい言葉がいっぱい散りばめられています。飢饉の「間引き」で生きたくても生きることができなかった「座敷わらし」たちが、自分自身や生きることを大事にしない主人公の少年ユタに、生きることのすばらしさを訴えかけていきます。「ユタは何かをするために、生きることを許されているんだよ」 、「決して一人じゃない。君はたくさんの大きな命に包まれているんだ」、そして「友達はいいもんだ」と人とつながることの大切さを。深い悲しみを背負いながらも、こうして少年を一生懸命励まそうとする「座敷わらし」たちに、何とも言えないせつなさと感動を覚えました。最後に出演者が客席に降りられ、全員で「友達はいいもんだ」の歌を合唱しましたが、観客も登場人物になったような一体感がありました。また、ロビーではひとりひとりの観客と握手されて、一生懸命思いを伝えようとされている劇団四季の方たちの姿に感激しました。
 
 内容的にも雰囲気を高めるための民謡調の歌や、「座敷わらし」登場場面のレーザビーム、フライング、激しい踊りなど見どころがたくさんある完成度の高いミュージカルになっていました。特に劇でつかわれている東北弁は、そもそもが発音が聞き取りにくい方言であるだけに、それを滑舌よく発音されているのには並大抵でないトレーニングあったのだと思いました。

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2006年7月17日 (月)

OUR HOUSE 大阪公演

Oursmall1 15日の17時30分開演の「OUR HOUSE」を観てきました。歌とダンスというミュージカルの基本に立った上で、建物を人が動かすというスピーディな場面転換や、タイミングの良いギャグのやりとり、相手のセリフに歌をかぶせていくなど様々なオリジナリティが用意されていたところが見所だったと思います。音楽は知らない曲が多かったのですが、孤独を表す場面のナンバーが哀愁を帯びていて心に残りました。善と悪というそれぞれの道を歩む二人のジョーが、時には並行して、時には絡み合うストーリーがおもしろかったです。ただ、白と黒の衣装の違いだけではなく、もう少し際だたせるもののある方が、観る者に理解されやすかったのではないかと思いました。結局最後に今井さんが歌われていた「愛する人と一緒に生きることが、一番の幸せ」という言葉にこのミュージカルのすべてがこめられていたと思います。熱演の中川君、重厚な今井さん、エレガントな香寿さん、コミカルな池田君、達者な後藤さん、みなさんありがとうございました。

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2006年3月12日 (日)

「家なき子」大阪公演

 大阪城も冷たい雨に濡れそぶるあいにくの日でしたが、BRAVAの中は若い女性や子ども達の熱気に包まれていました。中年の僕には場違いなのかもしれませんが、小さいころ読んだ「家なき子」と「クオレ」は自分にとって、生き方の原点になっている物語であるだけに、感性においては若い人には負けない自信がありました。動物たちとのふれあいが希薄だったのが残念でしたが、ヴィタリス親方の強くやさしい生き方、レミの「前へ」という困難に立ち向かっていく姿に、いつしか少年の日の自分に帰っていました。やっぱり歌がいいですね。セリフよりも心にひびくものがあります。「いつも願い続ければ、きっと望みはかなう。幸せは、誰にでもひとしくあたえられるのだから」

ひまわりの劇団員のみなさん、すばらしい熱演ありがとうございました。カーテンコールでのみなさんの涙と笑顔がとてもすがすがしく思えました。その中に、教え子がいてびっくりしましたが、彼女もこのような道を選んでいることを知りうれしく思えた一日でした。

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