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2012年2月11日 (土)

ミュージカル「十一ぴきのネコ」 大阪公演 11日 昼の部を観て

 今年は「井上ひさし生誕77フェスティバル2012」という長い名前のアニバーサリーで、1年間に渡り8本の作品が上演されるそうです。井上ひさしファンの自分にとっては、見逃せない年になりそうです。そしてその第一弾がミュージカル「十一ぴきのネコ」。

 馬場のぼるの絵本がベースになっているので、ファンタジックな舞台を想像していました。事実、客席には結構小さなお子さんの姿も多く見られました。しかし、サブタイトルが「子どもとその付き添いのためのミュージカル」とあるように、子どもたちももちろん見て楽しめますが、やはり井上作品らしく人間や社会をテーマにした内容の深い舞台であったことに間違いありません。

 開演前、「野良ネコ」たちが観客にちょっかいをかけうろつきまわっていきます。この時点ですでにファンタジックなネコではないことがわかりました。「キャッツ」のネコとはつくりがまず違います。へたをすればホームレスのようにも見えてしまいます。中にはたちの悪そうなのもおり、遅れてきたお客さんもからかわれていました。

 しかし、この個性豊かなネコたちがひとたび舞台に上がるや、群衆劇ならず群ネコ劇となって、見事に腹ぺこ野良ネコを演じていくのでした。特にひとつのリアクションを十一匹がそれぞれ異なるセリフでつないでいくパターンは、言葉がネコのように調子よく飛びかい、日本語のイリュージョンを聞いているようでもありました。そして、いつも最後の「にゃん十一」(山内圭哉)のところで、こけてしまうところがまた可笑しい。

 十一匹が繰り広げる、息のあったダンスやコーラスはまさにミュージカルの醍醐味であったと思います。しかし、それで楽しかっただけでは終わりませんでした。作品が作られた1971年という時代へのメッセージが色濃く込められていたからです。三島由紀夫の割腹自殺やベトナム戦争も登場しますが、それ以上に変わっていく日本人への作者の哀しみがそこにはありました。

 何も無い時代は貧しかったけれども、みんな明るくて互いに優しかった、そして人々は未来への希望のために力を合わせてなんとか生き抜こうとしていた。しかしひとたび豊かさを手に入れてしまうと、確かにあったはずのそんな大切なものが見えなくなってしまうと。

 「人間全体が幸せにならないといけない」、「自分の運命は自分で決める」といったセリフは現代に向けた井上ひさしの決意であるかのように思いました。

 主役の「にゃん太郎」を演じた北村有起也。みんなのために知恵を出して、前に引っ張って行こうとする理想的なリーダー役でしたが、時にはずっこけ時には間違う愛すべきネコを好演していました。

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