ミュージカル「ハムレット」 25日 大阪公演 昼の部を観て
「この世界を越えていきたい。すべてを置き去りにして、さび付いた夢さえも。そして2人飛び立とう」。劇中で歌われたハムレットとオフィーリアのデュエットです。若い情熱だけを頼りに生きようとする恋人たちの切ない思いがよく伝わってきました。こんな熱い気持ち、それこそ自分にとってはいつの間にか置き去りにしてしまいましたが、今思い切って新たな人生を踏み出そうとしている身には、なんとなく2人からの応援歌のように聞いていました。
「ハムレット」は学生時代に新潮文庫で読みましたが、舞台でみるのは初めてです。しかも、ミュージカル・ロックというのですから、どんなシェークスピアになるのだろうかと少し気をもんでいました。しかし、結論から言うと大変わかりやすかったです。シェークスピア独特の誇張された難解なセリフはほとんど無く、それらはすべてミュージカルナンバーに置き換えられ、出演者の感情がストレートに観る者の心に響いてくるようです。
複雑な悩みを抱えるハムレットの思いは、「ビー、ノット・ビー」の歌を以てしても、共感するには一度観ただけでは無理なところもありましたが、愛するハムレットに「尼寺へ行け」と邪険にされ、最後父さえ殺されてしまうオフィーリアの哀しみは、狂って歌う冒頭の歌に胸が熱くなってしまうほどでした。しかし、「ハムレット」って昼ドラなんか目ではない、相当なドロドロ復讐劇だったんですね。それもよくわかりました。
原作通りならば5時間はかかるという長編悲劇を、わすが2時間10分(途中休憩20分含む)で観られたというのは、本格的なシェークスピアを知らない者にとっては、リーズナブルな時間であったと思います。カーテンコールで主演の井上芳雄が、年長の村井國夫に「村井さんにはこれぐらいがちょうどいい」とからかっていたのもおもしろかったです。
急いだ部分、少しわかりづらいところもありましたが、ナンバーやダンスだけではなく、墓場で「ボチボチいこか」とかのギャグも入り、笑わせる場面もけっこうたくさんあって全体的に楽しむことができました。
ハムレットをつとめた井上芳雄。スレンダーで悩める王子の姿がよく似合っていました。感情のこめられた歌もうまいし、熱い演技でした。可憐なオフィーリア役の昆夏美、妖艶なガートルード役の涼風真世、正義感あふれたレアティーズ役の伊礼彼方など、多様な人物像がそれぞれの持ち味で表現されていました。


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