WOWOW「現代能楽集Ⅵ 奇ッ怪其ノ弐」を観て
「劇団イキウメ」の前田知大の作・演出作品。地震により噴出したガスのために、壊滅した村に残された神社が舞台。そこへ亡くなった神主の息子(山内圭哉)が戻ってくるが、山田(仲村トオル)と名乗るホームレスが住みついていて、幽明の境界をさまよう不思議な霊の話を始める。しだいにその神社にはこの世ならぬ者たちが漂っていることに気付いていく。そして・・・。
四角にしつらえた能舞台のような社(やしろ)で、時間と空間を飛び越え、演じる者が他者に頻繁に入れ替わる中で、様々な話が紡がれていきます。それらは当たり前に暮らしているはずの日常生活には、人の死を前にすることで、舞台に空けられた穴のようなひずみが出現することを示唆していました。臓器移植、携帯電話、インターネットなど現代科学が登場しますが、人の生死はそんなものでは決して説明できない、不合理で不条理で不可知的な世界であることを物語っていきます。
観ている者もつい、本当に自分が今生きているのか、生きていると思っているだけではないのか、とそんな気分にさせられてしまいます。逆に言えば普段我々は、知らず知らず生きていることに思い上っているだけなのかもしれません。
では生きていることが確かになるにはどうすれば良いか。それは死者と向き合うことであると作者は言っているように思えました。死んでいった者の思いや生きていた証を受けとめることが、彼らの魂を鎮め、そして今生きている自らの魂を顕らかにすることにつながるのではないかと。
仲村トオルが落ち着いた余裕のある演技で、死者と現世をつなぐ不思議な世界のナビゲーター役をうまくつとめていました。
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