映画「『聯合艦隊司令長官山本五十六」を観て
開戦70周年記念映画。
「この5年間で首相が9人も変わった」、「この閉塞した状況を打破するためになんとかしなければならない」と言われれば、どこかで聞いたことのある言葉ですが、これらはこの映画で語られたセリフの一部です。そして政治も経済も息詰まると、勇ましいことを言う者に国民の賛同が集まりやすくなります。「戦争をすれば景気が良くなる」「日本の進出を押さえつけているアメリカを打破しろ」「バスに乗り遅れるな」などという高揚した気分で、日本は三国同盟を結び、無謀なアメリカとの戦争を始めてしまいました。新聞も国民をあおる役割を果たしたこともよく描かれていました。
不戦海軍の思想を抱き、三国同盟に反対し対米開戦を避けようと尽力した山本五十六が、連合艦隊司令長官として真珠湾攻撃の指揮をとることになるとは、皮肉な運命と言わざるを得ません。それが困難な戦局の中にあってもあきらめず、最後まで講和で終わらせる努力をしたことは、任務に対する責任の取り方として畏怖すべきものを感じました。
そんな彼に対して、海軍軍令部との指揮命令系統が機能していなかったことが、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦の作戦失敗に終わったことにつながっていることもよくわかりました。個人の努力にかかわらず、システムに問題があると成功することがないことを如実に表しています。
自らの信念を全うし、冷静に大局をみつめ(戦争中も将棋に没頭するのもその表れでしょうか?)、軽挙妄動な発言にはその根拠を求め、現場の指揮官を信頼し、部下に温情をかける、まさにリーダーとしてふさわしい人物だとも思えました。「自分の目と耳と心で世界を見なさい」と若者に語りかけていましたが、今日本の進路を過つことのないためにも、心しなければならない言葉だと思います。
映画紹介に戦争スペクタルとありましたが、戦争場面はさほど多くはなく、人間「山本五十六」を意識した映画づくりのようでした。
山本五十六役の役所広司。風格あるリーダーをさせれば、この人の右に出る人はいません。家族や幼い者へ思いやる姿も自然で、人間味を感じさせてくれました。社の方針と真実の報道のジレンマに苦しむ若い記者を玉木宏が好演していました。「源氏物語」では生き霊に、この映画でダンサーにと演技に幅の広さを見せる田中麗奈、他に柳葉敏郎、阿部寛、瀬戸朝香、香川照之らが出演。
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