「異人たちとの夏」~大阪公演 29日昼の部~を観て
今日は僕の誕生日。さすがにこの歳になると、これまでにいろいろな人の死に巡り会いました。両親、親友、同僚、そして教え子。「異人たちとの夏」はこのように、もうこの世にはいない人たちとの、不思議なめぐりあいを描いています。
山田太一の小説で読み、映画化された作品も観て、そして今度は舞台。亡くなった両親にもう一度会いたいと思う気持ちがあるからか、やっぱり観てしまいました。
特に最後のすき焼き屋さんの場面。成長した息子を見届け、再び旅立とうとする父と母から、そんな立派な親にも夫にもなれなかった主人公が「よくここまでがんばったね」と声をかけられ、泣きながら「お父さん、お母さんありがとうございました」と頭を下げるシーン。ここは舞台になっても、いや舞台だからこそ今まで以上に、涙無くしては観ていられませんでした。両親が使っていた「わりばし」をそっとしまうところが、また切ないですね。
夏はお盆があったり、終戦記念日があったりで亡くなった人のことをより考えてしまう季節です。これまでは、僕も自分という生きている人間の立場でこの季節を迎えてきたように思います。しかし、今日この作品を観て、亡くなった人からは、今の自分はどのように見えているのだろうかと考えてしまいました。両親からは、友達からは、なんて言われるのだろうかと。最後に主人公が言う「亡くなった人の気持ちを考えることで、自分は生きているということを感じることができる」というセリフも、心を打ちました。このお芝居のように、懐かしい町を歩いていたら亡くなった両親にふと出会えて、「元気にやっているか」なんて声をかけてもらえたら、どんなにうれしいことかと思ってしまいました。
演出の鈴木勝秀と主演の椎名桔平のコラボは、一昨年の「レインマン」以来となります。今回も情感あふれるいい舞台でした。椎名桔平は何もかも失った孤独感が、異人たちとの出会いと別れにより、又生きていく意味を見いだしていく演技が素晴らしかったです。「レインマン」では華麗なリフティングを見せてもらいましたが、今回のキャッチボールも見事でした。初めて舞台で内田有紀を観ましたが、チャーミングな雰囲気から、最後はおどろおどろしくなるあたりの演技は見応えがありました。父役の甲本雅裕。なかなかの適役だったと思います。
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