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2009年7月 5日 (日)

映画「蟹工船」を観て

 原作に漂う蟹工船の臭気をも感じさせてくれる映像だったと思います。また原作には無い来世を願うお遊び的な所も、心からは笑えない雑夫たちのまことしやかで、悲しい心情をよく表していました。

 無産階級(プロレタリア)と呼ばれた人々が、国家のためという美名のもとに、資本家や軍部に搾取され利用さていた構図が見事に理解することができます。国や支配者が精神主義で鼓舞することほど、疑ってかからねばならないものはありません。それは支配される者の過酷さを覆うってしまう隠れ蓑にすぎないからです。

 この映画で象徴的に使われていたのが歯車です。自分の力では回ることができず、ただひたすら機械の一部品として組み込まれているにすぎない歯車。それは、貧困層に生まれた運命に逆らえず、来世にしか望みを託すことができない労働者の姿そのものと思われました。しかし映画では、人間は人や社会に回され続ける歯車ではない、一人一人人間として自分らしく生きる権利があると立ちあがるのです。彼らが作った労働組合の旗にも、歯車同士が手を結ぶ絵が画かれていました。

 舞台は80年前ですが、現代風なタッチなところに我々の社会が抱える「貧困」という問題にも、迫っていたように思います。
 
 監督のSABUですが、示唆的で象徴的な構成や映像がうまいなぁと思いました。トイレに閉じ込められた雑夫の壁をたたく音が響くシーン、歯車がはずれて倒れるシーンなどが印象的でした。
 
 労働者のリーダーとなる新庄を演じた松田龍平。「死ぬことぐらい自分で決めたい」というマイナス思考から、「我々は立ちあがらねばならない」というプラス思考への変化を力強く表現していました。監督役の西島秀俊、メイクで悪役顔となり声をはりあげての熱演となりましたが、イメージが先行して役になりきれなかったところがあります。佐藤浩市のような人が良かったのでは。昨日、大阪薫英高校の先生が、パンフレットを持ってこられて谷村美月が本校の卒業生であると紹介されていましたが、いきなりの登場で驚きました。

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