« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年5月

2009年5月30日 (土)

NHKドラマ「ツレがうつになりまして」第一回を観て

 かつて悪性腫瘍の手術後、次から次におそう痛みや不眠に絶望的な気分におちいり、たぶん薬のせいもあったでしょうが、壁一面に字が書いてあるように見えたり、外の景色を見ても家々が人の顔に見えたりした時がありました。そのとき担当のナースに「あなた、まじめすぎるんじゃない。ちょっと不良が入る方がいいよ」と言われました。このドラマを見てそれと同じ言葉を、原田泰造演じるツレと呼ばれる主人公にもかけてみたくなりました。

 すべて自分で抱え込み、仕事の失敗も人を責めないで自分のせいにする、几帳面でまじめで、自罰的な性格。それで順調にいけば、きっと一つのことをきっちりと成し遂げられるのでしょうが、個人がひとつ、ひとつ積み上げてきた積み木を一度に蹴倒してしまう非情さに満ちた現代社会では、誰でもが落とし穴にはまり変調を来すことが起こることは容易に想像できます。バリバリ働いてはずの自分がなぜこうなったんだろうと、涙を流す主人公を見て本当に心が痛みました。それとは逆に、藤原紀香演じるテンさんと呼ばれる奥さんの気ままな生活ぶりには笑ってしまいました。主婦失格とか、何をやってもだめとかそれなりに悩みを持ってられるようだけれど、それほど深刻になる気配もない。今まで頼り切りになっていた夫がウツになって、さぁこの妻はどうするか、次回からの展開が待たれます。「決して気分転換を図ろうとはしてはいけない。気分転換できなくて、余計に申し訳無いという気持ちが強くなるから」と風吹ジュン演じる精神科医の言葉にも、耳を傾けたいと思います。

 起き抜けでほとんどすっぴんのような藤原紀香を見て、いつもの華やかさとは違うコミカルでいて、どこか哀れさも感じる素顔の演技を感じました。人の良い性格から、自分を追い詰めてウツにおちいるまでの変化を原田泰造が、ていねいに演じていたと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009年5月24日 (日)

休校中の入院

 おりしも学校が新型インフルエンザで休校になっているこの1週間、自分はH市総合病院に入院しておりました。休校中の生徒はたぶん誰ひとり僕の入院は知らなかったと思います。何しろ入院直前まで一緒に修学旅行を楽しんでいたのですから。

 病名は転移性肝腫瘍。10年前のガン発病以来2度目の肝臓への転移となりました。転移の告知を受けてからの、当初から予定されての入院でした。治療の方法は、肝動脈化学塞栓療法(TACE)というものです。局所麻酔をした右足の付け根にある動脈から細い管(カテーテル)を通し、肝臓にある腫瘍近くまで来たら、抗がん剤をまぜたゼラチンスポンジを詰めて血管をふさぐというものです。簡単に言うとガンを「兵糧攻めに」してつぶすという作戦です。

 意識のある中行われますが、特に痛みや不快感はありませんし、特に緊張もしませんでした。というのも実は検査を含めてこれで3度目となるので、余裕があったのかもしれません。それでも看護師さんは、常に声をかけてくれて気をつかっていただいたし、BGMに女子十二楽坊をかけてくれていました(看護師さんの趣味か?)時間は2時間くらいでした。

 しかし、この療法が苦しいのは、終わってからなのです。動脈に穴を開けているわけですから、その後右足を絶対動かしてはなりません。安静状態を保たねばならないのです。10年前はそれが、翌日の朝までその状態を維持しなければなりませんでした。それがなんと言っても、苦痛だったのです。しかし今回は幸いにも、システムが変わったらしく、なんと安静時間は6時間に短縮されていたのです。よって夕方には解放され自由になれました。といっても、6時間でも腰は痛くなるし、何もできないしで難行には違いはありません。その後2日間は抗生物質などの点滴を受け、傷口からの出血や痛みが無いことを確認して6日間で退院できました。 あとは、なんとか次のCT検査で腫瘍が消えてくれることを願うばかりです。

 この10年で肝動脈化学塞栓療法(TACE)も進歩したようです。モニターも液晶が使われていたし、より正確に位置がわかるような最新のレントゲン機材が使われていました 医師や医療
技術を信じ、ひたすら自分にも免疫力をつけていくことをおこたりなくやっていきたいです。最後に献身的にかかわっていただいた医師や看護師の方々に感謝したいと思います。 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年5月17日 (日)

落石事故と修学旅行

 今年も3年生を引率し、高山・上高地方面へ修学旅行にでかけました。例年のようにNorikufadake 1日目の長良川のラフティング、2日目の高山市内の散策までは順調だったのですが、知らない間に大変なことが起きていました。それは高山から上高地へ抜けるための道路で、落石事故があり、通行止めになってしまったことです。後でこの事故で、作業員の方が一人亡くなったことも知りました。上高地で宿泊予定だった「五千尺ロッジ」からも今夜の宿泊は不可能という連絡も入り、どうなることかと不安が高まりました。しかし、添乗の阪急交通社、五千尺ロッジのご尽力で、その夜は乗鞍高原にある「ビィラ乗鞍」に宿泊できる手配をして頂けました。その間、添乗員やバスの乗務員が冷静に的確な判断をされたのを目の当たりにして、職業人としての意識の高さに感心しました。生徒を落ち着かせるために、何事も無かったように乗鞍高原の案内を始められたガイドさん、懸命に想定外の宿舎を探して走って頂いた運転手、そして携帯で連絡を取り続けられた添乗員さん。また「ビィラ乗鞍」でも受け入れのために、食材をかき集めて食事の用意をして頂きました。その方々のおかげで、生徒の楽しみを壊すことなく修学旅行を終えることができました。関係の皆様に感謝したいと思います。Norikura_iwakagami

| | コメント (1) | トラックバック (3)

2009年5月 9日 (土)

ミュージカル「ラ・マンチャの男」シアターBRAVA 9日昼の部を観て 

 今回のシアターBRAVAでの公演を加えて、1145回も上演されるというすばらしいミュージカルを、今日初めて観ることができました。前もって予習しておいたので、セルバンテスの物語とドンキホーテの物語が入れ子の仕組みになっていたのもよく理解できました。まず、生オーケストラの演奏で16世紀のスペインの世界へ誘われ、牢獄に放り込まれたセルバンテスと囚人達演じる劇中劇「ドンキ・ホーテ」にひきこまれ、そしてついには繰り返し歌われる「見果てぬ夢に」に感動し涙さえしてしまいました。最後にはセルバンテスの生き方と、ドン・キホーテの生き方がオーバーラップし、二人はともに「ラ・マンチャの男」となるというのもかっこいい終わり方でした。

 その奇行をからかわれ、狂気の沙汰とののしられながらも、心の気高さと夢を求めていったドン・キホーテ。セルバンテスもこう語ります。「現実に向き合わず夢ばかり見るのも狂いだが、現実におりあいをつけるしかないだけの生き方も狂いである。本当に大事なことは、夢を追い求め現実をいかに変えていくかにある」と。よく「がんばりすぎ」とか「人が良すぎる」とか言われながらも、やっぱり仕事をやらざるをえなくなってしまう自分に、この物語が重なって見えてしまいました。それゆえに「夢は実りがたく、敵はあまたなりとも、胸に悲しみ秘めて、我は勇みゆかん。道は極めがたく、腕は疲れ果つとも、遠き星めざして、我は歩み続けん」と歌われる「見果てぬ夢」には本当に心打たれ、そして自分はこれでいいのだと生きる勇気をもらったように思いました。
 
 それでいてけっこうコミカルな場面も多く、大阪バージョンでしょうか「床屋は今来たとこや」とか、「こりゃまた難儀な」とかのセリフは笑わせてもらいました。
 
 松本幸四郎さんは力みが抜けた柔らかい演技で魅了し、松たか子さんは精一杯のエネルギーほとばしらせた熱演で素敵でした。言うまでもなく歌も素晴らしかったです。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2009年5月 2日 (土)

「ムサシ」大阪公演 2日 昼の部を観て

 4本の先行抽選を申し込んでようやく手に入れた座席は、後方ながらもセンターの見やすい位置で大変満足でした。小栗・藤原コラボの人気からか、客席はいうまでもなく女性ファンで埋め尽くされ、大変な熱気を感じました。ストーリーは巌流島の決闘で敗死したはずの佐々木小次郎をここでは生き返らせ、武蔵にリベンジを果たすという井上ひさし版「それからの武蔵」になっています。 

 禅や説法など重々しく冗長とさえ思える長いフリの後に、観る者が予想もつかない展開が待つという連続であったように思います。もっと言うとこのお芝居全体が、最後の意外なオチへ落とし込むための長いフリそのものだったとも言えないこともありません。しかし、おかしかったのは確かです。5人6脚で足が結ばれたまま、仲違いする武蔵と小次郎がズッコケながらまじめに「論争」する場面や、剣の稽古がタンゴになって全員が見事にシンクロしていく場面などは最高に笑わせて頂きました。このあたりが井上・蜷川コンビの真骨頂だと思いました。しかも笑わせて終わりではなく、井上ひさしのメッセージもしっかり込められていたと思います。ひとつは「恨みの連鎖」を断ち切るというものです。なぜ武蔵と小次郎は戦い殺し合わねばならないのかということをモチーフに、「9.11」から連なる恨みの鎖を断ち切り、世界の非戦を願ったものと思われました。もうひとつは「生きることのすばらしさ」です。死んではわからない、生きていないと感じることができないことにもっと気づかないといけないと。

 いじられキャラでわかりやすい小次郎を演じた小栗旬、スマートでかっこ良かったです。武蔵の動と静の使い分けが見事だった藤原竜也。子どもようにけんかしあったり、時には気があったりで、ふたりの演技が魅力的でした。それにしても何度観ても白石加世子さんの変幻自在の演技はすばらしいの一言につきます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年4月 | トップページ | 2009年6月 »