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2009年2月

2009年2月22日 (日)

NHKドラマ「ガラス色の恋人」を観て

 日本放送作家協会主催 第32回創作テレビドラマ大賞受賞作。沖縄の琉球ガラス工房で働く小日向美波(吹石一恵)のもとに、ガラス造りに魅せられた大学生・月野圭介(崎本大海)が訪れる。その後、圭介に移植された心臓は、美波の亡くなった恋人・笠原英貴(瀬川 亮)の心臓だったことがわかり・・・・。
 
 小説やテレビドラマで、心臓移植された人の性格が心臓提供者の性格と似てくるという話を聞いたことがあります。実際にもそのような事実があるようで、「記憶転移」というそうです。このストーリーもこの話を一つがモチーフになっています。圭介が初対面の美波に出会った時、驚いて思わず手にしていたガラス瓶を落としてしまったり、英貴が言った同じ言葉(「細胞レベルでいやされる」)を圭介が口にするというシーンです。

 しかしこのドラマはその不思議さと、二人の奇跡的な出会いが大きなテーマになっているのではなく、ガラスの再生に重ね合わせて、人間の命のつながりと生きることの喜びを表現しているのだと思いました。亡くなった人の命は、このドラマでは象徴的に心臓なんですが、あるいは言葉であったり、あるいは思いであったりして、自分の命そのものの中に生き続けているのだと。だから自分だけの命ではない、ゆえに命をかつぐのは重いけれど、しっかりと自分を生きることが命をつないでいくことになるのだと。それに気づいた美波と圭介は、まさに新しい人生への再生をはかったのだと思いました。沖縄の美しい海と、沖縄の心優しい人たちがいっそうこのドラマを感動的にしていました。短編なのに素晴らしい脚本だと思いました。
 
 荒削りだけど、恋人の面影を胸に真摯に生きようとする美波役を、吹石一恵がとても魅力的に演じていました。

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2009年2月21日 (土)

キャラメルボックス2009ハーフタイムシアター「すべての風景の中にあなたがいます」「光の帝国」 21日大阪公演を観て 

 サンケイホールプリーゼはオープン以来3回目の観劇となります。今回は初の2階席で山頂から谷間の舞台を見下ろすようなロケーションに、少し驚いてしまいました。入り口から2階席に上がるのも、階段を登りフロアを巡り、さらに階段を登りフロアを巡りの繰り返しで、初めてこの劇場に来たときにロビーから見上げた2階、3階になぜ人がぐるぐる歩いているのか不思議に思いましたが、その謎が今日やっと解けました。
 
 さて、キャラメルボックス。楽しみのひとつは前説にあります。いつも趣向をこらしたおもしろい作品?なんですが、今回は両編とも歌できました。ひとつは童謡バージョンの替え歌で、可愛らしく勢揃いしたメンバーが「女子高生の突っ込みは、『あの人、めっちゃかみすぎ』、おばちゃんのおしゃべりは『あの役者さん、うちの息子にそっくり』」とかの歌詞で笑いを取りながら、マナーの注意を呼びかけていました。もう一つは「ゆず」ばりのギターを抱えた二人組で、いきなり「最後の曲になりました」と、こちらも喜ばせてもらいました。
 
 1本目は「すべての風景の中にあなたがいます」。携帯電話が未来とつながるとか、手紙が未来に届くとかのよくあるパターンのタイムトラベルものですが、キャラメルが演じると不思議と新鮮さを感じてしまうのですね。それだけひたむきな熱演があるからだと思います。またかと思いながらも、引き込まれてしまいます。それとこの作品はタイムマシンなどの機械は登場せず、山の深い霧とか「人の思い」がアクションをおこし、時間を越えて過去と未来をつなぐという設定が、ちょっと幽玄的な世界を醸し出していました。といってもギャグは満載で、過去と未来を越えて出会っている二人に、横からいろいろちょっかいを出す細見大輔さんの役が傑作でした。岡田達也さんの紹介も「ちょっと旬をすぎたアイドル風」といのうがよく受けていました。
 
 2本目は恩田陸さん原作の「光の帝国」。前もって原作の小説を読んだときには、キャラメルにぴったりのお話だと思いましたが、予想に違わずワンダーランドな舞台でした。暗記力にたけた「しまう」とか、人の気持ちが伝わる「ひびく」とか特異な能力を持つ常野(とこの)の人々のお話。一見民話風なんですが、けっこう意味するところは深いものがあります。決してあらわにしようとしない父親の息子に対する不器用な愛情には、胸打つものがあり、「僕たちは、無理やり生まれさせられたのでもなければ、間違って生まれてきたのでもない。それは光があたっていると同じように前から決まっている決まりなのだ」というセリフは、すべての人が持つ命の重さはすべて同で、どの命にも意味があるのだと、僕には思えました。場面的には、シェークスピアの長いセリフを家族みんなで唱じるあたり、お母さん役の坂口理恵さんがからんできておもしろかったです。畑中智之が「トリツカレ男」で見せたような純粋な心を持つ少年の役を、この作品でもうまく演技していました。

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2009年2月15日 (日)

映画「旭山動物園物語 ペンギンが空を飛ぶ」を観て

 動物園物語と言っても、主役は動物ではなく人間でした。かわいい動物目当てに小さな子もたくさん来ていましたが、小学校の高学年以上でないとストーリーはわかりにくかったのではと思います。

 ノーベル賞のような発明とか発見ではなくても、こんな世界においても人間の創造力の発露があるというすごさを感じさせてくれる映画でした。人気が無くて閉園に追い込まれそうになった動物園の園長や職員は、どうすれば魅力ある動物園にすることができるのかを考えます。その答えのひとつが、「行動展示」というものでした。動物がもつ能力を精一杯見てもらおうというものです。樹上で行動するオラウータンを下から見上げてもらう、水中ならばジェット機のように飛ぶペンギンを見てもらうといったアイデアです。このようなアイデアが生まれるのも、動物を心から愛し、動物の姿をつぶさに知っている職員ならではのことだったのでしょう。ただアイデアだけではどうにもならないものがある。それは予算です。たびたび市長など行政側が登場しますが、財政難を理由に動物園側の要求を認めることはありませんでした。しかし、園長の情熱とあきらめない気持ちが、最後には行政も変えていくのです。金は出せないのに、精神力だけを要求するだけの行政ではやる気も失せてしまいます。北海道に旅行に行くときは是非、旭山動物園に寄ってみようと思いました。

 日本映画で全編日本語字幕付きの映画というのも初めて観ました。

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2009年2月11日 (水)

テレビ朝日開局50周年記念ドラマスペシャル「警官の血」 を観て

 佐々木譲原作、「警官の血」テレビドラマ化作品。2夜連続放送、脚本・監督は鶴橋康夫。
 
 昨年、上下2巻という大部の小説を買い、読み始めで普通の警察小説とは雰囲気がどこか違う、歴史小説かドキュメンタリーなテイストについていけず結局断念しておりました。それが今回のドラマで、幸いにもその後の展開を観ることができて、勧善懲悪とか人間愛とかで簡単に言い含めることができない、この作品の深さを感じることができました。一つの家系を追うという定点観測のようだけれど、そこには数々の物語がありました。一つは三代に渡り、警官の正義とは何か、警察官の魂を追い求めていった物語があり、一つは警察という組織の闇の部分に素手で向き合わねばならなかった物語があり、一つはその時々の歴史に翻弄される人間の物語があり、そして、通奏低音のように響く戦争の影がありました。何が良くて、何が悪いとか、誰が善人で、誰が悪人かといような単純なものではなくて、人間が抱える闇の部分や、保身に走る組織の実態、その中で生きねばならない苦悩というものをありのままに描かれていました。その意味で娯楽作品にはない重厚なドラマだったと思います。 

 三代の警察官を演じたのが、江口洋介・吉岡秀隆・伊藤英明という豪華キャストで 、初代の純朴さ、2代目の繊細さ、3代目の剛胆さのキャラをそれぞれの持ち味でよく表現していました。三代に渡ってかかわり、戦争を引きずって生きなければならない刑事役の椎名桔平、年齢を重ねていく演技が見事でした。

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2009年2月 7日 (土)

映画「マンマ・ミーア!」を観て

 四季の舞台で観たように、観客みんなで「Dancing Queen」を立ち上がって歌い踊るというような盛り上がりはありませんでしたが、そこはミュージカル、心沸き立つものがありました。

 特にドナ(メリル・ストリープ)がサム(ピアース・プロスナン)に自分のどうしようもない運命を切なく歌う「The Winner Takes It All」は、曲の美しさとあいまって胸が熱くなりました。若き日の自分に思いをめぐらせ、今もなお枯れることない人への愛を感じていたいという女性がいとおしく思われる映画です。またおおらかに性を語り、老いさえも笑い飛ばせる明るく元気に満ちあふれた人生、ほんとうに楽しそうでうらやましくもありました。美しい島の風景が舞台にはない奥行きをだし、主人公たちの歌につねにからまる、島民やホテルの従業員たちのバックダンサー、バックコーラスぶりがコミカルで躍動感ある映画をつくっていました。そして何よりABBAの歌、やっぱりいいですね。本当に歌いたくなる歌ばかりです。
 
 メリルストリープ、熟年の魅力があふれていました。アマンダ・セイフランド、キュートで表情豊かな演技が素晴らしかったです。彼女が最後に歌う「I Have A Dream」も感動しました。

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2009年2月 1日 (日)

映画「チェ 39歳別れの手紙」を観て

「チェ 28歳の革命」の後編。 ボリビアでゲリラ戦を指揮中に政府軍に捕らえられ、処刑されるまでを描く。
 
 キューバ革命時の英雄的な活躍は見る影もなく、山岳地帯での絶望的な戦いの連続に「なぜ」という問いを避けられませんでした。キューバにいれば妻と5人の子に囲まれた幸せな生活と、民衆の畏敬のまなざしの中で生きることができたのに、それらを捨ててまで何のゆかりもない、異国の地で自ら死を選ばねばならなかったのかと。映画の中で彼は「革命家という最も崇高な人間に高めていく」というようなことを語っていました。彼は革命の中でしかもう生きることができなかったのかもしれません。政府軍の兵士に「共産主義者なのに神を信じるのか」と問われて「私は人間を信じる」と言う場面があります。人間を信じるがゆえに、貧困や抑圧は命に代えてでも戦っていかねばならない敵だったのだと思いました。名誉や地位などは求めない、ただひたすら信念にのみ従った壮絶な生き方としか言いようがありません。

 しかし、残念ながら彼の行動は救おうとした民衆に支持されることなく終わりました。今も一つの信念だけで世界が変わることはないでしょう。それでも他人のことを考えて行動できる人間がいる限り、「人間は信じる」に値するものだとゲバラは言い残したように感じました。

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DVD「同窓会」を観て

 サタケミキオ第1回脚本・監督作品。サタケミキオこと詫間孝行が主演もつとめている。

 東京セレソンデラックスという劇団の座付き作家であり、役者でもある詫間孝行の感性の光る作品になっています。わかりやすい性格である主人公の視点に引き込まれてしまい、観ている自分もまんまとだまされてしまい、最後の種明かしには思わず「うまいなぁ」と叫んでしまいました。登場人物の現在のストーリーに、誰もが持つ高校時代の懐かしくそして切ないストーリーをていねいにかぶせて行くあたりも、涙腺を弱め胸をジンとさせる効果が十分とありました。しかし単なる叙情に流されてしまうことなく、斬新な映像でむしろ軽快なテンポで楽しめる映画になっています。そして随所に伏線が張り巡らされて、それがだんだんとつなぎ合わさっていく様など、なかなか手のこんだ脚本作りです。 長崎県島原を舞台にして、九州弁を駆使するあたりも、美しい風景と人情が相まって見どころの多い映画といえそうです。

 ただ、雪役の永作博美が高校時代を演じた尾高杏奈とちょっと結びつきにくかったり、病院の話には無理があると思ったりもしましたが、おもしろい映画には違いありません。1月23日からレンタルが開始されていますので、是非ご覧下さい

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