映画「ブラインドネス」を観て
最近、新型ヴィールスによる感染被害の予測が現実化されてきた感もありますが、この映画も突然、人の視力を奪い視界を「白い闇」で覆ってしまうという伝染病を描いています。ただ普通のパニック映画とは趣を異にしています。この種の多くの映画では対策に追われる政府、国家、軍隊などの混乱ぶりにカットを割きますが、この映画ではほとんどそのようなシーンは観られず、舞台は感染患者が隔離された病棟で繰り広げられる、「食欲」や「性欲」のままに生きる人間の姿をリアルに描くことに費やされていきます。散乱するゴミ、汚されたままのトイレ、そして食料を支配するために「王」となり権力を振るう男の登場。人間の持つ醜さに目を覆いたくなってしまいます。ただ、平等であることは一人の女性をのぞいて、誰も目が見えないということです。だれもが社会的弱者になっているということです。ここでは、人種の違い、貧富の差など何一つ通用しません。一人では絶対に生きていけないし、見た目の価値ではなく内面の価値が問われていく世界になります。それでも弱肉強食の生存競争になるのか、目が見えない者同士寄り添って生きていくのか、人間の存在をも深くつきつけた映画になっていました。見た目の美醜や価値に振り回されている現代人にとって、考えさせられる映画でもありました。
映像的には、最初の展開をアップテンポで描き、観る者を「隔離病棟」に有無を言わさず引きずりこんだあと、じっくりと「人間の闇」を見せつける手法はただならぬものを感じさせられました。日本からも、伊勢谷友介・木村佳乃が熱演していましたが、ジュリアン・ムーアの追い詰められた者の厳しく迫真の演技が素晴らしかったです。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)

