周防正行監督作品「それでもボクはやってない」
就職活動中の26歳の青年(加瀬亮)が、満員電車の中で女子中学生から痴漢行為をされたと訴えられ、逮捕される。取り調べの刑事や当番弁護士からは罪を認めれば、保釈され今なら示談ですむと勧められる。しかし青年は一貫して無実を主張し、弁護士(役所広司・瀬戸朝香)や友人(山本耕史)らの支援を受けて裁判に臨むことになるが・・・・。
いわゆる法廷劇ですが、よく見られるようなカリスマ弁護士の活躍も、法廷で息をのむようなやりとりもここには描かれていません。描かれているのは現実の生の刑事裁判の姿です。周防正行監督は、ユーモアの入り込む余地を一切無くし、裁判官の声のかけ方などリアリティにこだわり、えん罪について正面から切り込んでいました。「痴漢えん罪事件は日本の刑事裁判の問題点がはっきりあらわれている」と映画の中で弁護士が語っています。有罪率99.9%を誇る?刑事裁判の判決の下では、証拠のない痴漢事件はより被告人が無実を立証するのが非常に困難であるということがよくわかりました。もしこれが自分だったらと思うと背筋が寒くなります。裁判官が正義の味方であると信じることさえ、幻想のようにも思えてしまいます。真実かどうかは知りませんが裁判官が無罪判決を出して国家権力に逆らえば、出世コースからはずされるということも映画では指摘していました。僕は裁判官の社会生活経験の乏しさも問題にあるようにも思えます。たとえば最後の「いたいけな15歳の少女が訴えると言うことは、非常に勇気が必要だったと思われるのに、それをあえてしたということはその証言は信用できる」といった裁判官(小日向文世)の言葉です。間違っているとは思いませんが、あまりにも固定観念過ぎるのではないでしょうか。その意味で民間の方が裁判員となる制度は一定評価できるようには思えます。
役者では、加瀬亮が自分の突然おかれた境遇に戸惑いながらも、「それでもボクはやっていない」と必死に訴える姿に好感が持てました。期待していた役所さんの弁護士は訳知り顔過ぎて、いまいち青年の立場に立ちきれていなかったようにも思うのですが、実際の弁護士というのもそんな感じなのでしょうか。僕の好きな小日向さんが「12人の優しい日本人」の時と同じようなキャラの厳しい裁判官役で、ちょっとショックでした。次回は小日向さんらしい役をあたえてあげて下さい。
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コメント
TBさせていただきました。
日本の裁判の理不尽さに、愕然としました。
投稿: タウム | 2007年1月21日 (日) 11時58分